カメラ好きの保育士さん

我が地域では、幼稚園というものがなく、皆小学校に入る前の1年間だけ、保育園に通っていました。さあ奈良で評判の保育園にどうやって、5歳になってようやく社会に出ることになります。保育園でのことで記憶にあるのは、脱脂粉乳が尋常ではなくまずかったことと、テレビでアニメの黄金バットをいつもみんなで身を乗り出して見ていたことです。妙なことを覚えているものです。ですが、最も強烈な印象は、とある保育士さんが大変カメラに凝っていて、趣味として私たちの写真を撮ってくれていたことです。その人気の奈良でも大和高田で保育園があれば園庭で遊んでいる時によく写真を撮ってくれました。自由に遊んでいるところを撮ってくれることもあれば、ポーズをつけられることもあります。記憶にあるのは「鉄棒にぶら下がって苦しそうな顔をして」とか「ジャングルジムに登って、上から見下ろして」とかです。で、圧巻だったのは、私と父を畑で撮りたい、と言われたことです。父に話すと快く承諾してくれ、数日後、その先生が夕方、我が家にやって来ました。父は公務員で5時過ぎに帰宅するので、5時半ごろだったでしょうか。先生のオーダーでヤカンとタオルと何か適当なものを風呂敷で包んだ物を持って、歩いてすぐの我が家の小さな畑に行きました。そして、タオルを首にかけた父は少し屈んで作業をしている風を装い、そこに私がヤカンと風呂敷包みを高々と上げ、「お昼だよー」と言っている芝居をつけられました。また、父の顔にタオルをあて、汗を拭いている芝居もつけられました。これは、ちょっと照れ臭かったのを覚えています。こんな感じで色々な写真を撮ってくれ、撮ったものはすべて現像・プリントして、くださいました。畑での父との写真は大きく引き伸ばして渡されました。それら一連の写真はしっかりアルバムに貼ってあり、たまーに眺めてはほのぼのした気分に浸っています。とてもいい思い出です。その先生には大変感謝しています。